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胆管がん来春までに救済 専門組織新設へ 「労災」判断急ぐ

2012/10/17

 ◆大阪の印刷会社優先 厚労省方針
 大阪市や宮城県などの印刷会社従業員らが胆管がんを発症していた問題で、厚生労働省は、すでに労災認定を申請している発症者らの早期救済のため、認定の可否を判断する専門の検討会を省内に新設する方針を決めた。発症者が集中している大阪市の印刷会社従業員らを優先的に取り扱う見通しで、年度内にも労災認定が可能かどうかを判断する。
 労災認定は通常、申請を受けて全国の労働基準監督署が検討する。しかし、発症原因がはっきりしないケースなどは、労基署レベルでは、認定の可否を判断することが困難で、同省の検討会が結論を出す方法が採られる。同省に記録の残る1998年以降、胆管がん患者が労災認定された事例はないという。
 これまでアスベストやダイオキシン、放射線被曝(ひばく)で行われた事例はあるが、個別業種の労働問題で採用されるのは極めて異例。検討会メンバーは胆管がんに詳しい医師や化学物質の毒性が専門の学識経験者などになる見通しで、同省は具体的な人選を進めている。
 今回の問題では、7月25日時点で印刷会社従業員ら18人(うち11人が死亡)が労災認定を申請。申請者のうち10人は、大阪市の印刷会社「SANYO-CYP」の従業員らという。
 いずれも印刷機の洗浄液に含まれる化学物質が原因物質と疑われているが、それぞれの労働者がどれだけ化学物質にさらされていたか明確になっていない。原因については、同省の研究班が疫学調査を始めているが、結論を出すまでに数年かかる可能性もある。
 通常の手続きでは労災認定まで長期間かかる見通しで、同省幹部は「申請者を長く待たせるのは適切ではない。特定に至らなくても、原因となった可能性が高いと判断できれば労災認定は可能」としている。
 労災認定されれば、発症者には治療費や休業補償が給付されるほか、死亡している場合は、遺族に年金や一時金が出される。労災認定は業務で健康被害を受けた労働者の救済が目的で、一般的には企業側の責任が問われることはないが、従業員が損害賠償を求めた民事訴訟などに影響する可能性がある。
 一方、同省は7月下旬から、全国の印刷業の事業所約1万6000か所を対象に胆管がんの実態調査を実施しており、来月上旬までに調査結果を公表する。

 〈胆管がん〉
 肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで運ぶ胆管にできるがん。厚生労働省の調査では、これまで全国の印刷会社従業員ら計24人の発症が確認されている。印刷機の洗浄液などに含まれる化学物質「ジクロロメタン」「1、2-ジクロロプロパン」が原因物質と疑われている。この物質は工業原料や洗浄剤、溶剤としても幅広く使われている。
[読売新聞社 2012年8月23日(木)]